道徳といえば二宮金次郎
3月末、安倍内閣は
「憲法や教育基本法に反しない形で教材として用いることまでは否定されない」と
教育勅語についての答弁書を閣議決定しました。
稲田防衛大臣も
「教育勅語に流れているところの核の部分は取り戻すべきだ」と述べている他
さらに「教育勅語否定 まるで言論統制」と言い切る産経新聞には
あの戦争からの反省は微塵も感じられません。
どうかしているどころかこの感覚に呆れてしまいます。
自民党の船田元・憲法改正推進本部長代行ですら
「教育勅語」を教材で使うことを認めた政府答弁書について、
「いささか違和感を覚える」
「戦前の軍部や官憲による思想統制の道具とされてしまったことは言うまでもない」
「百歩譲って教材に使うとしても戦前の反省から失効したと教えることは最低限求められる」
と指摘しているように政党を超えた良識はさらに声をあげてほしいものです。
なにより「親孝行」とか「友達を大切にする」、「兄弟仲よく」「夫婦も仲よく」などは
「教育勅語に流れているところの核の部分」ではありません。
そんな昨今の動きを読んでか新聞に「道徳といえば二宮金次郎」として
「二宮金次郎の一生」(三戸岡道夫・著、栄光出版)
という本の広告が掲載されていました。
ちょうど3月に城廻りの師匠と共に真岡の二宮尊徳資料館や桜町陣屋跡、
桜町二宮神社を訪れてきただけに、
さっそく出版社には申し訳ありませんでしたが図書館で借りてきました。
これがなかなか。
二宮金次郎といえば母校の小学校の校庭のあの蒔を背負いながら
読書に勤しむ姿が強くやきついていますが
(もしかしたら多くの人もこの印象が強く、今では歩きスマホを連想し
二宮金次郎を教える教育の機会が少なくなっているのではとも危惧してしまいます)
いやいや、二宮金次郎は生活コンサルタントであり
金融から経営までに至る指南役、多彩な実業家であることがわかりました。
道徳以上のものがこの「二宮金次郎の一生」から学べます。
日本の財政再建にも金次郎が参考になります。
地方自治体も国家も、今の日本が行政改革ともいえる分度を立てられるか
多くの政治家や役人に二宮金次郎に触れて欲しいものです。
また道徳を説きながら有事の際は国家のために(天皇のために)命をも惜しむな
とする教育勅語がこの時代に蠢く様には何やら怪しいものを感じざるをえません。
金次郎の「報徳」の教えの中心である「勤労、分度、推譲」の一つの徳目「推譲」は
「世の中のために尽くす」ことですが、
これは戦争遂行のために利用されるようなことがあっては絶対になりません。
為政者は必ずいいます。「平和のための戦争」であると。
その戦争遂行のために「勤労」動員させ、国民に間違った「分度」を強いて
戦場で死ねば神になれると、、、。
いつの間にか「尽くす」「世の中」が別のものにすり替わっているレトリックに
我々は同じ過ちを繰り返してはなりませんね。
国民が為政者や天皇のために「尽くす」のではなく
為政者こそが国民の平和のために「尽くさなければならない」のです。
道徳は憲法にも似ています。
国民に何かを強制するのはなく時の権力の暴走を縛り抑制するのが
憲法であるのと同時に、ことさら「道徳」を持ち出してくる為政者には
「道徳」の先にある教育勅語の核心が見え透いてきます。
「道徳」が必要なのは教育の現場以上に政治家たちではないでしょうか?
「道徳」のみじんも見られない政治家や会社が多すぎます。
金次郎は桜町領の復興再建にあたり
援助金とか補助金とかといってお金を下賜されぬようと
小田原藩主・大久保忠真に願い出る場面がありましたが、
3・11大震災では多額の税金がかきあつめられ
むろんすべてではないものの、この復興予算がほとんど関係ない地域や案件に
国土強靭とか震災関連対策と称してつぎこまれてきた実態や
今も続くこの復興予算に群がる利権者たちの談合を見ると
「基本は仁政じゃな」と金次郎の桜町領の復興再建計画にうなずく
大久保忠真の言葉が重く感じられます。
震災復興もオリンピックもしかり、美辞麗句を並べた主旨の裏側に見え透くのは
「道徳」のかけらもない利権者や政治家、役人の寄生虫のようなおぞましい姿です。
国民に「道徳」を説く前にまずはこの方たちに二宮金次郎を学んで欲しいものです。
声高に「道徳」を叫ぶ為政者にこそ
「道徳」や二宮金次郎の教えが必要なのではないでしょうか?
二宮金次郎なら右翼も左翼もありませんしね。
お役人さん、そんたく(忖度)よりもそんとく(尊徳)読んでくださいね。
小田原藩復興のための分度を最後まで立てられなかった
藩士たちのようなことがくれぐれもないように。
また政活費が生活費や飲食に化けているような政治家には特にです。
さてさてこの4月には日光市に二宮尊徳記念館がオープンした聞きました。
こちらも機会を見つけて訪問したいものです。
桜町陣屋跡と師匠
二宮尊徳資料館で頂いた周辺ガイド(左側黄色)と真岡市のパンフ(右)
何度か利用させていただいております道の駅「にのみや」
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